リンパ浮腫の治療

  1. Home
  2. /
  3. 診療案内
  4. /
  5. リンパ浮腫の治療

リンパ浮腫発症のメカニズム

乳がん切除に伴う腋窩(えきか)リンパ節廓清術、婦人科がん(子宮がんや卵巣がんなど)切除に伴う骨盤内リンパ節廓清(かくせい)後に生じる続発性リンパ浮腫では、上肢や下肢の先端の部分から心臓の近傍にある胸管に至るまでのリンパ経路の途中が手術の影響で閉塞しています。リンパ浮腫の発祥初期は閉塞部より遠位部に位置するリンパ管内にリンパ液が貯留しますが、症状が進行するにつれてリンパ管内より周辺の皮下組織や筋肉内にリンパ液が漏出し始めます。その後、漏出したリンパ液は局所で炎症を引き起こし、脂肪細胞や線維組織の沈着を引き起こすことでリンパ浮腫の症状(患肢のだるさ、おもさ、周径増大など)は徐々に進行していきます。

リンパ浮腫の治療

リンパ浮腫の治療は、大きく分けて手術治療と手術以外の治療(複合的理学療法)に大別されます。このうち治療の主体は複合的理学療法です。複合的理学療法には、治療用の弾性ストッキングやバンテージ包帯を用いた圧迫治療に加え、リンパの流れを促進するリンパドレナージ術、スキンケアなどがあります。

一方、リンパ浮腫の外科的治療は、新しいリンパ経路を再建(作り直す)するための手術を行います。具体的には、手足の閉塞部分より末梢の部分で皮下脂肪内にあるリンパ管と細静脈を吻合し、リンパ管内で停滞しているリンパ液を静脈の方向に排出する術式で、その名の通りリンパ管細静脈吻合術(LVA)と言います。手術の内容は非常にシンプルで分かりやすいのですが、実際の手術では吻合を行うリンパ管や静脈が1mm以下と非常に細いため、手術用の顕微鏡を用いて10数倍に拡大して行います。リンパ管細静脈吻合術は、この様な特殊な技術(スーパーマイクロサージャリー)を要する術式であるため、施行可能な医療機関は限られています。残念ながら北陸地方では手術治療が可能な医療機関がほとんどないのが現状です。当院で手術を担当する小野田はこれまでに500箇所以上のリンパ管静脈吻合の経験を有し、早期のリンパ浮腫症例から進行期の症例まで幅広く手術を手がけています。

リンパ浮腫に対するその他の術式としては、浮腫によって増大した皮下組織や脂肪組織を切除する手術や体の他の部分から正常な機能を有するリンパ節を移植する方法(リンパ節移植)などの報告がありますが、切除に伴い残存したリン

パ機能が失われる点や、治療効果が不確定であるなどの欠点があるために、限定された適応患者さんのみに行われているのが現状です。

リンパ管細静脈吻合術(LVA)
リンパ管細静脈吻合術(LVA)

リンパ管静脈吻合術の特徴

非常に細い血管やリンパ管を対象とするため、皮膚の切開は数cm程度であり、体の負担が少ない低侵襲な術式であるといえます。続発性リンパ浮腫の患者さんは、侵襲の大きながんの手術後の患者さんが多いため、手術という言葉に抵抗感が強い患者さんが多いと思います。しかし、リンパ管細静脈吻合に関しては、多くの場合70代や80代の患者さんでも問題なく行うことが出来る術式です。

一方、手術の効果に関しては個人差が大きいのがこの手術の特徴です。治療効果の差異の原因に関しては、色々な要素が複合していると推測されていますが、その中で重要な要素としてリンパ浮腫の進行度が挙げられます。リンパ浮腫が進行するとリンパ管に硬化や繊維化などの変化が生じ、リンパ管の輸送機能が低下することによって手術の効果が得られにくくなるとされています。また、浮腫の進行による硬化や繊維化は不可逆性であり、この様な変化が生じる前に手術を行うのが望ましく、早期の浮腫の患者さんほど良い手術適応であると考えられます。浮腫の進行期の症例では、外科的手術に加えてバンテージなどの圧迫治療を複合的に行うことで大部分の患者さんが治療効果を実感されています。

当院でのリンパ浮腫治療

富山大学附属病院では、リンパ浮腫の外科的治療に関しては私が担当し、保存的治療に関してはリンパセラピストの資格を持つ看護師や療法士が担当し、緊密に連携を取りながらチーム治療を行っています。今後、周辺の医療機関の先生方やリンパ浮腫診療に関わっているみなさま方の力をお借りして、富山大学附属病院を北陸地方のリンパ浮腫治療の基幹施設として発展させていきたいと思っております。リンパ浮腫診療で当院と連携頂けます医療機関やリンパ浮腫患者様でお困りの患者さんがいらっしゃいましたら、ぜひ御紹介・受診の程宜しくお願い致します。