乳がん術後の乳房再建

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乳がん術後の乳房再建術

富山大学附属病院形成再建外科・美容外科では、乳がんの根治性と乳房の整容性の両立を目指して、乳がん治療・乳房再建センターにて、乳がん手術から乳房再建までを一貫したチーム医療で行っています。

乳がん先端治療・乳房再建センター|診療科・中央診療施設等のご案内|富山大学附属病院 (u-toyama.ac.jp)

乳がんの診断でこれから乳がん治療を行う患者さん、他院で既に乳房切除術を受けた患者さん、他院でエキスパンダー挿入術を受けた患者さんなど、広く受け入れています。
乳がん治療と乳房再建が必要な患者さんについては、乳腺外科とキャンサーボードを行い、治療方針について検討しています。

穿通枝皮弁による乳房再建術

形成再建外科・美容外科では、自家組織(穿通枝皮弁、脂肪注入)を用いた乳房再建を主体に行っています。患者さんご自身の脂肪を移植して温かく柔らかく美しく自然な形態と大きさの乳房再建を目指しています。

移植する組織や臓器を「皮弁」と言います

乳房再建の方法

人工物
(シリコンインプラント)

保険適用あり

利点
乳がん手術の傷痕のみ
手術時間が短い

欠点
長期のメンテンナンス
感染、露出
被膜拘縮(変形や疼痛)
硬い、冷たい
BIA-ALCLのリスク

自家組織
(穿通枝皮弁・筋皮弁法)

保険適用あり

利点
温かく・柔らかい
自然な形態が再現しやすい

欠点
長い手術瘢痕
長時間手術
血行障害のリスク

自家組織
(脂肪注入)

保険適用なし / 自費診療

利点
温かく・柔らかい
手術時間が短い 日帰りも可

自然な形態が再現しやすい

欠点
複数回の治療が必要
感染や脂肪壊死のリスク

皮弁採取部では筋体を採取せずに、身体の負担を少なくした穿通枝皮弁法で再建します。

穿通枝皮弁法

患者さんの乳房の大きさと形態、乳がんの術式、体型、希望に応じて下腹部(お腹)、大腿部(太もも)、殿部(お尻)、腰部(ウエストライン)、鼡径部(ビキニライン)、対側乳房、上腹部、季肋部、側胸部、背部などから、皮膚と皮下脂肪を血流が保ったままの状態で採取して移植します。数ミリの細い血管を顕微鏡下につないで再建します。採取する部位も術後に美しい仕上がりとなるよう心掛けています。

穿通枝皮弁を用いた乳房再建術
~皮弁の採取部について~

皮弁の採取部について

乳房の知覚回復や疼痛緩和を目的とした神経再生誘導術を行い、再建乳房の知覚の再獲得を目指しています。また乳がん術後のリンパ浮腫を合併している患者さんには、リンパ管静脈吻合や、リンパ節付き遊離皮弁を行い機能面の再建も重要視しています。

ご希望の患者さんには人工物再建(シリコン乳房インプラント)の再建も提案します。乳がん手術と同時にエキスパンダー挿入術を行い、十分に拡張した後にインプラントへの入換え術を行います。

治療開始前には、画像検査(造影3DCTおよび超音波)後に、綿密な治療計画を立て、患者さんやご家族に治療法について詳しくご説明します。

遊離皮弁による乳房再建後は、安全性を高めるため、ICUおよび病棟にて皮弁の循環監視を綿密に行っています。合わせて早期離床を目指し術後リハビリテーションも行います。平均で術後7日から10日間の入院で退院となります。

乳房再建後6~12ヶ月後に乳頭乳輪再建術、修正術(形や大きさ、術後の瘢痕など)を行います。

再生医療:培養脂肪幹細胞を付加した脂肪注入による乳房再建

培養脂肪幹細胞を併用した脂肪注入による再生医療(第2種)を提供しています。国内の大学病院での実施施設は僅かです。

乳がん術後や、先天性の乳房低形成などの患者さんの乳房再建に用いることができます。脂肪注入による乳房再建は、乳がん手術後で再発や転移がなく、皮膚欠損が少なく皮下脂肪が残り、大胸筋の欠損や萎縮が少ない患者さんの再建に向いています。

痩せていて採取できる脂肪が少ない、両側乳がん術後で再建にたくさんの脂肪が必要、放射線照射後で乳房皮膚へのダメージがあり組織の修復が必要。このような患者さんの乳房再建には、培養脂肪幹細胞を新鮮脂肪に付加して移植することで、移植脂肪の生着率向上や、組織の蘇生化、肥沃化が期待できます。

最初に20ml程度の脂肪吸引を行い、脂肪幹細胞を大量に培養して、これを凍結保存します。6ヵ月毎に吸引で採取した患者さんの新鮮脂肪に、解凍して洗浄・遠心により得られた培養脂肪幹細胞を添加して、再建する部位移植します。目立つ傷痕を残さず、温かく柔らかい乳房を再建します。

脂肪吸引部は主に腹部、大腿部、腰部から行います。採取部についても術後の整容性を重視した脂肪吸引を行います。

侵襲が少なく2時間ほどの手術で、2~3日間の入院で済みます。

移植脂肪の生着率向上のために、体外式乳房拡張器を術前後に併用していただきます。

術後は診察、超音波検査を行い、経過をみます。必要に応じてMMG(マンモグラフィー)、MRIを行います。

純脂肪 コンデンスリッチ脂肪(CRF) 脂肪幹細胞付加脂肪 培養脂肪幹細胞付加脂肪
どんな脂肪か?

採取した脂肪から、脂肪以外の不純物(水分や血液等)を排除したもの。

不純物だけでなく老化した脂肪細胞も除去した脂肪。純脂肪に比べて、肝細胞密度が濃い。

脂肪から肝細胞を抽出し、これを純脂肪に加えたもの。純脂肪に比べて、肝細胞の数が多い。

脂肪から肝細胞を抽出し、これを純脂肪に加えたもの。純脂肪に比べて、幹細胞の数が多い。

どんな人が適応か?

乳房の皮膚・皮下脂肪が比較的温存されている方

  • 純脂肪よりも脂肪の生着を高めたい方
  • 脂肪が潤沢にある方
  • 脂肪生着率をより高めたい方
  • 脂肪がかなり潤沢にある方
  • 脂肪生着率をより高めたい方
  • 痩せていて脂肪量の少ない方
手術時間
1.5~2時間
2~2.5時間
4~5時間
1.5~2時間